ウェブユーザビリティはサイト運営に欠かせない要素です。この記事では「ユーザビリティ」とは何か、「UI」と「UX」との関係、ユーザビリティ向上のコツについて解説いたします。現在サイトを運営している方、運用を検討している方はぜひご一読ください。
■ウェブユーザビリティとは
ウェブユーザビリティとは・・・の説明の前に、まず「ユーザビリティ」について確認していきましょう。
ユーザビリティ(usability)とは直訳すると「製品やサービス」に対する以下のような意味があります。
・使いやすさ
・使い勝手
・有用性
もう少し具体的に説明すると、「製品やサービスのユーザーが目標を達成するために、どれだけ負担なく便利に利用できるかどうか」です。
ユーザビリティはISO(国際標準化機構)によって、国際規格【ISO9241−11】として制定されています。内容は以下の通りです。
【特定の利用状況に置いて、特定のユーザーによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い】
ここで重要なのが、使いやすさといっても「全員に対してではない」ということです。ユーザビリティは「特定のユーザー」に対しての使いやすさを指します。
サイトの使いやすさを測る言葉に「アクセシビリティ」がありますが、これは誰にとっても使いやすくユーザーの範囲を広げたい場合に重視される指標であり、ユーザビリティとは少し異なります。
では、ウェブユーザビリティとは何なのでしょうか。それは「ウェブサイトの使いやすさ」です。
ウェブサイトの使いやすさも全員に対してではなく、「ターゲットとするユーザーにとっての」使いやすさとなります。
■ウェブユーザビリティが重要視される理由
ウェブユーザビリティはウェブサイトの運営や運用を検討している方にとっては、必ずチェックしなければならない存在です。その理由は主に下記の通りです。
・離脱率やコンバージョン率につながる
・企業や商品ブランドの価値を下げる可能性がある
ここではそれぞれの理由について解説します。
離脱率やコンバージョン率につながる
ウェブユーザビリティが重要視されていないウェブサイトは、離脱率やコンバージョン(成果)率に悪影響を与えます。
ウェブユーザビリティが重要視されていない=そのウェブサイトは「使いにくい」からです。
ウェブサイトが使いにくければ、ユーザーはすぐに離脱し別のサイトへ移動してしまいます。使われずに離脱されてしまえば、当然ですがコンバージョン率も上がりません。
通販サイトで具体例を考えると下記のようなものが挙げられます。
・商品を探すために使用する検索ボックスがページの一番下にある
・一覧表示に画像が無く、どのような商品か全くわからない
・読み込みが遅くストレスがたまる
極端な例も挙げましたが、要するにユーザーに使いにくいと思われるウェブサイトは滞在時間も短く、成果も見込めないのです。
企業や商品ブランドの価値を下げる可能性がある
ウェブユーザビリティが重要視されていないウェブサイトを運営している企業は、その企業や商品ブランドの価値を下げてしまうことも考えられます。
ウェブサイトが使いにくい印象を持たれると、その企業はITについてあまり関心がない、技術が低いなどのイメージを持たれてしまう可能性があるからです。
立ち上げ初期のウェブサイトであれば改善点が多くあるかもしれません。しかしそれを放置したまま改善しないことは企業、商品ブランドの価値を下げ売上の低迷につながりかねません。
■ユーザビリティと密接な「UI」「UX」 の関係性
ユーザビリティについて調べると必ずと言っていいほど出てくるワードがあります。それが「UI」と「UX」です。
ここでは「UI」と「UX」とは何なのか、そしてユーザビリティとの関係性について解説します。
UI
UIは「ユーザーインターフェース(User Interface)の頭文字をとった略称です。
インターフェースは直訳すると「境界面」や「接点」といった意味があります。つまりUIとは「ユーザーと接する部分」となります。
ウェブサイトでいうと、下記のようなあらゆる「構成要素」がUIです。
・ボタン
・メニュー
・文字(フォントや色も含め)
ウェブサイトに限らず、例えば身近な家電の「テレビ」で考えれば以下の通りです。
・リモコン
・本体のスイッチ
・裏面などにある外部接続端子
UIが「モノや要素そのもの」であるのに対して、ユーザビリティは「UIがユーザーにとって使いやすいかどうか」を指す関係性となります。
UX
UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略称です。エクスペリエンスとは「経験」を意味するため、UXとは「ユーザーの経験」となります。
もう少し具体的に説明すると、「ユーザーが商品やサービスを利用することで得られる経験」となります。
通販サイトの例で考えると以下のようなものが考えられます。
・商品の画質がよく、同じ商品でも写りを変えた写真がたくさんあったので選びやすかった
・余計な広告が少なくて商品を選ぶのに集中できて良かった
・届いた服を実際に見てみたら色味が違って残念だった
ユーザーにとって良い経験も悪い経験もどちらもUXです。UXを向上させるための手段の1つにユーザビリティやUIが存在すると捉えるとわかりやすいかと思います。
■ユーザビリティ向上の基本10原則
ここまでユーザビリティとはなにか、ユーザビリティが重要視されている理由について解説してきました。ではそのユーザビリティを向上するためには何を意識すれば良いのでしょうか。
ユーザビリティを考える際、欠かせない概念としてウェブユーザビリティの第1人者であるヤコブ・ニールセン博士が提唱した「ユーザビリティ向上の基本10原則」があります。
ユーザビリティ向上の基本10原則がある程度しっかり守られていれば、ユーザビリティは高いものになります。以下にそれぞれについてご紹介いたします。
システムの状態を可視化する
システムの状態をユーザーがわかるように表示することで、ユーザビリティ向上につながります。
例えばアプリをダウンロードする際に、現状どこまで進んでいるのかパーセンテージで示す、アイコンの色の変化で分かるようにする、などです。
実世界とシステムをマッチングさせる
こちらは使い方をユーザーがすぐに理解できる仕組みにすることを指します。
ユーザーの使用言語や地域などに寄り添った情報の提示を行い、また、専門用語や独自の用語ではなく、一般的な言葉の使用も重要となります。
ユーザーに制御と主導権を与える
主導権が常にユーザーにあることを意味します。ユーザーは何らかのミスをしてしまうものです。いつでも簡単にミスする前に戻れる、などの機能をもたせると良いでしょう。ウェブブラウザにある「一つ前に戻る」が具体例となります。
一貫性と標準性を保持する
サイト内で同一の機能を持つ操作は同一のデザインにすべきというのが一貫性。標準性は、一般的な慣習に従った意味を持つデザインを用いるべきという意味を指します。
一般的に「+」は増えることを意味すると思いますが、ブラウザでタブを増やしたい時は「+」をクリックすれば簡単に行えるように、見るだけで瞬時に「タブを増やせる」ことがわかるようにできています。
エラーを起こさない
ユーザーが誤った操作をしてもエラーを起こさない仕組みにしましょう。仮にミスをしても大きなエラーにさせないことも大切です。
一度エラーが起こればそれを改善、修正するのが面倒で、ユーザーが離れる原因になる可能性があります。
覚えなくても理解できるデザインにする
アイコンを見ただけでどのような機能なのかがわかるようにしましょう。ウェブブラウザのホーム画面に戻るボタンが家の形になっていたり、再読み込みが円形の矢印ボタンになっていたり、などが一例です。
柔軟性と効率性を持たせる
サイトを閲覧するユーザーによって、あまりウェブサイトに馴染みがない人もいれば、慣れ親しんだ人もいます。
馴染みが少ない初心者には見た目で操作できるような機能、慣れ親しんだ上級者にはショートカットキーで操作できる機能などを用意し、ユーザーそれぞれに合った操作性を準備しておくことをおすすめします。
最小限で無駄の無いデザインにする
装飾の多用は使いにくさ、見にくさにつながります。
・使う色味は合わせる
・強調する色は1色にする
・文字のフォントも無駄に変更しない など
余計な装飾をせず、情報は最低限に絞りましょう。
ユーザー自身で認識、診断、回復ができるようにする
エラーは発生させないのが第一ですが、絶対に発生させないのは不可能と言えると思います。エラーが発生した場合にも、ユーザー自身が次にどうすればいいかわかるように明示しましょう。
ヘルプとマニュアルを用意する
機能や用語、操作などで不明点が出たときに参照できるヘルプやマニュアルが必要です。
単にヘルプとマニュアルを用意すればいいというわけではなく、下記の点を意識しましょう。
・ヘルプやマニュアルに簡単にアクセスできる
・ユーザーの目的とする内容が探せる
・目的を達成するための手順や方法がわかりやすく掲載されている
■まとめ
いかがでしたか。
ターゲットとするユーザーにとっての「使いやすさ」を指すウェブユーザビリティは、ウェブサイトの離脱率、企業のイメージに影響を及ぼす重要なものです。UI、UXとの関連性をきちんと理解し、「ユーザビリティ向上の基本10原則」を意識した改善を行い、向上を目指しましょう。
ウェブユーザビリティを向上させるためのノウハウはありますが、一朝一夕では実現困難です。実際にウェブサイトを運用して得た結果を検証し、改善し、また運用していく、の繰り返しが重要になります。短期的な施策や中長期的な取り組みが必要となるため、多角的な視点で運用していきましょう。
この記事がウェブサイト運営の参考になれば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。